経済関係のニュースや新聞を読んでいるとなにかと話題に出てくる「金利」というキーワードですが、それが私たちの保有する金融資産に与える影響がなんなのか、理解していますか?
今回は分かってるようで分かってないことが多い金利についてできる限り分かりやすくまとめました!
更に金利が金融資産として代表的な、株価・債券価格・為替に与える影響とその関係性をまとめてみました。
金利とは?
一口に金利と言っても、短期金利と長期金利の2種類があります。
取引期間が1年未満の金融商品の金利
国の中央銀行(日本の日銀やアメリカのFRB)が決定する政策金利によって調整される
取引期間が1年以上の金融商品の金利
マーケット参加者の需給によって決定される
両者の大きな違いとしては、短期金利は各国の中央銀行が決定する政策金利によってコントロールされているのに対して、長期金利は将来予測をもとにしたマーケット参加者の需給によってコントロールされている、という点です。
将来的にインフレが予測されているのだとすれば、長期金利は上昇することになります。逆にデフレだと低下することになります。
政策金利(短期金利)についても、インフレつまりは物価上昇率をもとにして中央銀行が上げ下げすることになるので、短期金利と長期金利は似たような動きをすることが多いです。
また、好景気の場合には金利は緩やかに上昇していく傾向にあります。
当たり前ですが、すぐそこの未来とずっと先の未来でしたら、すぐそこの未来のほうが予測がしやすいですよね?
短期で満期となる債券の金利よりも、長期で満期となる債権の金利のほうが、遠い未来で将来予測がしにくい分リスクが高いと考えられます。そのため、リスクが高い分リターン、つまり利息となる金利も高くなります。
よって通常は「長期金利 > 短期金利」という関係が存在します。
一方、先ほど説明したように、長期金利はマーケット参加者の思惑によって上下します。
また、好景気のときには金利は緩やかに上昇するので、
これから景気が良くなるとマーケット参加者が考える → 金利が上がると予想する → 長期金利が上がる
これから景気が悪くなるとマーケット参加者が考える → 金利が下がると予想する → 長期金利が下がる
ということが起きます。
これにより、通常は “長期金利 > 短期金利” という関係があるはずが、将来への景気不安が大きくなると、この関係が逆転することがあります。
実際にリーマンショックが起きた2008年の直前にはアメリカの長短金利差はマイナス圏にまで落ち込んでいました。

日経新聞「円安シナリオに落とし穴 米長短金利、来年に逆転も」より引用
ですから、長期金利と短期金利の差がマイナスになることは、景気後退の前兆であると考えられています。覚えておくといいかもしれません。
金利と債券価格の関係
金利と債券価格は逆の関係にあります。
金利上昇 ⇒ 債券価格下落
金利下落 ⇒ 債券価格上昇
この理由は単純です。
債券価格、例えば年利回りが5%の国債があるとします。国債の価格が100円だとすると、毎年5円の利息が支払われます。
金利が上昇したとすると、世の中の他の債券の利回りも上昇するため、この国債の毎年5円の利息では魅力が薄れますから、価格が100円よりも下落することになります。
これが金利の上昇が債券価格を下落させるという逆の関係にある理由となります。
金利と株価の関係
一般的に金利と株価は逆の関係にあります。
一般的にという言葉を頭に付けた理由は、先ほど書いた通り緩やかな金利上昇は景気上昇している際にも起きることであって、必ずしも逆の関係にはないということです。
ですが、金利の上昇は株価に対して下落圧力となります。
金利上昇 ⇒ 株価下落
金利下落 ⇒ 株価上昇
この理由はいくつか考えられます。
- 金利の下落が債券や銀行預金投資への魅力が下げ、株式投資に切り替える投資家が増えるため。
- 金利の下落が企業の借入金への利息負担を減らし、企業の業績に好影響となるため。
- 金利の下落が住宅ローンなどの利息負担を減らし、一般消費者の消費を促し企業の業績に好影響となるため。
金利の下落シーンについてだけ書きましたが、金利の上昇シーンではこの逆のことが起きて株価が下落することになりますね。
金利と為替の関係
短期的には金利と為替レートは相関の関係にあります。
また頭に「短期的には」という余計な一言が入りました。ここについては補足をご参照くださーい。
金利上昇 ⇒ その国の通貨が上昇
金利下落 ⇒ その国の通貨が下落
例えば、アメリカの金利が上がると円安ドル高になりやすく、アメリカの金利が下がると円高ドル安になりやすい、ということです。
この理由は、世界中の投資家は金利が高く、利回りの高い通貨のほうが簡単にお金を増やすことができますから、自分のお金を高金利の通貨に換えておきたがるからです。それがその通貨を高くする圧力になるというわけです。
為替レートの上下は2つの通貨間での相対的な価値の上下を表しますので、正確に言うと2国間の金利差が広がれば広がるほど、金利が高い通貨にお金が流れていきその通貨の価値を押し上げることになります。
2国の金利が同時に上下しても影響しないということです。
リーマンショック後に輸出国が各国そろって輸出業の利益を上げるために通貨安競争として、金利の引き下げを行っている!という話は記憶に新しいかと。
金利とインフレ・デフレ、つまりは物価上昇率、は非常に強い関係があります。
極端な物価の上昇を引き起こさないように、中央銀行は金利を引き上げることで安定を図りますから、物価上昇率の高い国の金利は高くなります。
物価が上昇するということは、これまでは100円で買えていたものが、120円払わないと買えなくなる、ということです。これは別の見方をすると円の価値が下がっている、ということができます。つまり、物価上昇している国の通貨は価値が下がり、通貨安を起こしているということが言えます。
よって、金利が高い国は物価上昇圧力も高いことが多いのですが、長期的にみると金利分の恩恵と物価上昇による通貨価値の目減りでトントンになる場合があります。
今後の株式市場への影響は?
私たち株式投資家にとっては、「で、結局株式投資にどう生かせばいいのよ?」というところですよね。
世界中で最も注目を集める指標の一つである、アメリカ10年債利回りは現在2.9%を超えています。

これはここ数年では高値圏と言えそうですね。
金利上昇は株価下落圧力であるのであれば、今後の株価は下落方向に行くとも考えられます。
一方で、景気上昇局面では緩やかに金利も上昇していく傾向にあるので、この金利上昇を「景気が回復している良い金利上昇だ!」という受け止められ方もしている様子。
一般論では、金利の上昇は株価にとってはマイナスだが、リーマンショック以降、度々見られた長期金利の上昇は、本格的な景気拡大とそれにともなう米国経済正常化の期待感から、むしろ株式市場関係者の間では歓迎されてきた。しかも、今回の長期金利上昇は、考えてみるとまったくたいしたことはない。
でも、今月に入ってから起きた株価暴落は、アメリカの賃金上昇の指標が高くなっていることによる物価上昇、それに伴う金利上昇をイメージさせたことで発生したとの読みも出ています。
米国株は2日に2016年9月以降で最大の下落率を記録した。
背景には、1月雇用統計で賃金の伸びが09年以降で最大になったことを受けてインフレ懸念が広がり、米国債利回りが跳ね上がったことがある。
ただ、私としてはこの考え方も結果論的な気もするんですよね。2月に入ってからの株価暴落の理由を無理やり探して、金利じゃね?とした流れな気がしてなりません。
2017年には暴落といえるような株の大きな下落はほとんどありませんでした。株式投資をしている私自身も、押し目となる調整をそろそろ求めていた感じもしていますが、そういうそろそろ株価の調整を求めているムードが株式市場全体にあったような気がしています。なので、「賃金上昇率が高い」という事実は、みんなが押し目調整を望んでいる雰囲気に火をつけるちょっとしたきっかけに過ぎなかった気がしてなりません。
ただ、今後長期金利の上昇が過度に進んだり、あるいは長短金利差がマイナスに沈むことがあると、企業活動に悪い影響を与えることになるでしょうから、押し目を超えた暴落が起きるかもしれません。
今後も注目したいところです。
金利についてはこちらの本が分かりやすくておすすめです!