今回は、「日本ライフライン」という会社についての企業分析を行ってみました。
先日のパフォーマンス公開記事に出しましたとおり、日本ライフラインは私の保有している銘柄の一つです。
ビジネス概要
当社は、循環器領域を専門とする独立系の医療機器商社であり医療機器メーカーです。広く心臓疾患に関わる医療機器を取り扱い、日本国内の医療現場をサポートしています。
日本ライフラインHPより引用
特に心臓疾患に関する医療機器の販売を行うことを主ビジネスとしています。
特徴として、商社機能とメーカー機能を有しているということです。
取扱商品
日本ライフラインが扱う商品は4つの領域に大きく分別されています。
- リズムデバイス
- EPアブレーション
- 心臓血管外科・血管外科
- インターベンション
それぞれの概要は以下の通りです。
1. リズムデバイス
不整脈治療に使われる、体内植込み型機器。
2. EP/アブレーション
不整脈の検査や治療を行うための、ディスポーサブル式の電極のついたカテーテル(細い管)などの医療機器。
3. 心臓血管外科・血管外科
本来の機能が失われてしまった血管や心臓の弁を人工の器官に置き換え、治療するための医療機器。
4. インターベンション
カテーテル(細い管)を皮膚を通して血管内に挿入し、心筋梗塞や先天性の心疾患などを治療するための医療機器。

日本ライフラインHPより引用
各事業領域の売上比率は上図の通り。
EP/アブレーションの売上が最も大きいくなっていることが分かります。
とはいえ、ぶっちゃけ各商品のことはよく分からない(笑)
また、日本ライフラインはメーカーから医療機器を仕入れて販売する商社機能と自社製造販売するメーカー機能の両方を有していることも特徴です。

日本ライフラインHPより引用
近年は外部メーカー商品の仕入れ販売よりも、自社での商品開発に注力しているようです。
売上高の半分以上が自社製品売上で占められており、そちらのほうが当然ながら高い利益率となっています。後述しますが、これが近年の高い利益成長率の要因になっているようです。
業績推移
自社製品を主にすることで利益率大幅アップ

売上と利益の推移を確認してみましょう。
売上、利益ともに右肩上がりで推移していることが分かります。
特に、営業利益をはじめとした利益の伸び率が特に2016.3月期、2017.3月期に大きくなっていることが分かります。
過去の決算短信を確認すると、純利益については、2016.3月期には特別利益を計上しているため、あまり気にしなくていいと思うのですが、営業利益と経常利益が大きく伸びているのは良い点です。
損益計算書を見ると、
・売上の増加に対して、販管費の増加幅が小さい。
・売上の増加に対して、売上原価の増加幅が小さい。
というのが見て取れます。
日本ライフラインが定期的に発行している事業報告書を見ると、以下のような記述があります。
実際の決算書を見てみても、確かに利益率は改善し、ビジネス収益性が高くなっていると思われます。
Q.近年の急速な利益水準向上の要因は何でしょうか?
A.ここ数年の利益改善の一番大きな要因としては、やはり、自社グループ製品の売上高の伸長が挙げられます。仕入商品に比べて収益性が高い自社グループ製品の売上高が全体の5割を超えるまでに成長したことにより、売上高の増加に加えて売上総利益率が改善しております。
第37期 中間報告書より引用
会社の方針としても、自社製品を主軸に置くものとしていることが分かります。
それに伴い、研究開発費への投資額は年率10-20%程度増やしていますね。
来期も二桁増収増益を予想
来期(2018.3月期)の業績予想は成長率が少し落ちていますが、それでも売上は10%強の増収、利益は20%前後の増益を予想しています。
ちなみに、日本ライフラインは過去に何度も業績の上方修正を行っています。
今期も第2四半期に大幅な上方修正をしています。
一方で、四季報の2018.3月期予想は会社予想よりもいくらか下方向の予想となっています。
現在の営業利益率はおよそ20%にまで達しています。
ここ数年の大幅な利益の成長率は、営業利益率の改善が主な要因であるのは明らかですから、今後もこのレベルの成長率を出せるかどうかは営業利益率を今以上に上げられるかどうか、に等しいことになります。
日経デジタルヘルス「業界構造からみた医療機器ビジネス経営課題と対応の在り方」より引用
上図を見てください。
日本の医療機器メーカーの営業利益率の分布です。
日本ライフラインの売上規模ですと、営業利益率としては11.8%程度が平均となっており、現状の20%は非常に優秀な数字であることが分かります。
また、日本ライフラインは、以前から中長期計画として2021年までに営業利益率を18%にすることを目標に掲げていることを考えると、すでに営業利益率はかなりの高水準にあり、これ以上の大幅な改善は難しいのではないかと考えています。
そうすると、今後は売上成長率とほぼ等しい水準の利益成長率となり、20%程度の成長率を維持するのがいいところかなと思います。
(余談ですが、他の電機メーカー等のメーカーに比べると医療機器メーカーの利益率の高さはすごいですね。。)
ビジネス成長性
先日発表された2017.3月期決算書を確認してみました。

2017.3月期 決算短信より引用
各領域20%前後の高成長を出していることがわかります。
特に、売り上げ規模の大きいEP/アブレーションの成長が止まっておらず、変わらず高い成長率を出しているのは強いですね。
本当はこの辺の各商品のシェアや競合優位性まで調べたかったのですが、なかなか有益な情報がつかめませんでした。この点は残念。
ところで、日本ライフラインは主に心臓疾患に関する医療機器を強みとしています。
心臓疾患患者の数は、高齢化も相まって増加の一途をたどっており、これは同社の業績にとっては追い風となります。
一方でリスクとしては、医療機器価格の改定が行われる可能性です。
現在も医療機器価格の改定が日本ライフラインの業績にマイナスの影響を既に与えているようです。今後もこの改定が進むと、同社の業績を圧迫する可能性はあります。
現在株価

現在の株価は過去最高値の水準にあります。
特に先日の決算発表での大幅増益がストップ高にまで押し上げる結果となりました。
予想PERは、21.4倍です。
近い医療機器メーカーと比較すると、
日本光電工業(6849)21.0倍
ディーブイエックス(3079) 19.5倍
ですので、ほぼ同水準です。
しかし、これらの企業と日本ライフラインですと成長率の差が非常に大きいので将来成長率も加味すると、日本ライフラインのほうが割安と考えることもできます。
今後の投資判断
現在持っている日本ライフライン株については、引き続き所有するつもりです。
むしろ買い増しも検討しています。
来期は売上高以上に営業利益が増加する会社予想になっています。
今以上の営業利益率が本当に出せるのか?という懸念はありますが、今後の心臓疾患医療機器のポテンシャルも考えての判断です。
【追記:2017年7月30日】
日本ライフラインの2017年第1四半期決算の記事を書きました。こちらもどうぞ。